どうも、おっさんです。
今回のお話にはやや尾籠(びろう)な内容が含まれます。
お食事前の方などは読むタイミングにご注意ください。
今はどうなんでしょうか、昔は小学校のトイレで“大”をするのは何となく恥ずかしいという雰囲気がありました。
そこで何とか帰宅するまで頑張ろうとするわけですが限界に達してしまい、授業中におずおずと申し出て却って注目を浴びてしまう、という悲惨な事例もありました。
そうでなくても健康にいいわけがなく、学校として「朝、登校前にトイレを済ませておくこと」という指導が行われたわけです。
「ちゃんとトイレに行くんですよ」
「はーい」
ですむなら教師ほど楽な仕事はないでしょうが、そこはわんぱく盛りの子供たちが相手です。一筋縄ではいきません。
そこで私たちの担任だったK先生はこうしました。
まず、黒板に人間の消化器系の図を描きました。口から入った食べ物が食道、胃、小腸を経て…という具合です。
「…そして小腸から大腸に行き、そこで“便”になって、その先にある直腸というところに溜められた後、トイレで排出されるというわけだ。そこで問題だが、ずっとトイレに行かなかったらどうなると思う?」
私たちは食べ物が消化される仕組みは何となく知っていましたが、その先を深く考えたことはありませんでした。
「トイレにはいかなくてもご飯は食べるだろう?そうすると便は直腸にぎゅうぎゅうに詰め込まれていって、やがてはカチカチに固まってしまうんだ。そうなってからトイレに行ってももう遅い」
先生はみんなを見渡して続けます。
「こうなってしまうとどうしようもないから、直腸ごと切り取ってしまうしかないんだ」
K先生は黒板の大腸と直腸の境目辺りでサッとチョークを走らせました。
あたかも切れ味鋭いメスのようだったかもしれません。
「その後どうするかというと、お腹側に穴をあけて大腸の先をつなぐんだ。これを人工肛門というんだよ」
私は人工肛門という言葉を耳にしたのはこの時が初めてでした。おそらくクラスメイトたちも同様だったと思います。
「病気やけがなどでこういう生活をしている人たちが現実にいるんだ。だけど、『朝トイレに行くのが面倒だから』という理由だったら、悔やんでも悔やみきれないと思わないか?」
教室はシーンと静まりかえっています。小学生にとっては少々刺激が強過ぎたかもしれません。
これ以降、私たちのクラスではトイレに関するトラブルはなかったと記憶しています。
この話は私の中にずっと印象深く残りました。ですが後年になって思い返してみると、その内容以上の教訓に気づきました。
つまり、人を動かすときは「なぜそうしないといけないのか」「そうしないとどうなるのか」を懇切丁寧に説明し、納得させることが重要ということですね。ただやみくもに指示・命令をしてもなかなか思い通りにはいかないものです。
当たり前のことですが、意外と忘れていませんか?
うーん、今回はいつになくまじめなお話になりましたね。次はもっと固い話なのか、それともくだけたものになるか。
また次回、お目にかかりましょう。